AnZ ESSAY ー小林 正人ー
2016年3月
●新しい出会い。別れ。出立・・・。この季節に思い出すことがあります。平成14年に大手のジュエリーブランドから独立して1年が過ぎた12月。元同僚だった早瀬が一大決心で入社しました。一応会社ですが事務所は6坪、社員も私一人。描く未来はありますが、約束はできません。
●早瀬は、先日まで同僚だった私をどう呼んでいいのか戸惑っていました。呼ばれる側の私が、社長と呼ばれることが照れくさく、そんな気分が伝わっていたからです。
●年が明けた一月にある男から連絡がありました。関です。彼は大学時代、ともに体操競技で汗を流した仲です。独立すると決めたとき、大分県で教職に就いていた彼を訪ねました。いつか一緒にやれたらいいな。そんな話をしても、実現することはないと思っていました。その彼から面接をしてもらえないかとのまさかの内容でした。
●驚きとともに、彼の男気に感動しました。早瀬の場合もそうですがこの転職は人生をかけるものになります。突き詰めて話した結果、一緒に歩むことになりました。
●2月。早瀬と二人、岐阜県の恵那のかんぽの宿で露天風呂につかりました。「早瀬、4月に関が入ってくる。俺なぁ、組織を作りたいんや。強靭な人間組織を」。組織。それは単に集団ということではなく、ともに一つの夢や目標を追いかけ、達成するためのものです。
●ある朝。早瀬から電話がありました。第一声が「社長おはようございます」。あれからもう10年以上たちますが、今も耳の奥に鮮やかによみがえってきます。